中国15都市のブロックチェーン政策の比較

2018年のブロックチェーンの急速な普及のあと、業界は徐々にテクノロジーと実体経済の結合という方向へ落ち着いてきており、2019年は「ブロックチェーン元年」と称される。

企業は実体経済と各都市の政策、資金、人材と密接に関わっており、特にどの都市に属しているかによって、ブロックチェーン企業の実体経済への踏み込みは大きく異なる。これはもはや企業の宿命だ。

多くの都市が新しいテクノロジーを利用して都市を発展させたいと考えているが、実際に新しいテクノロジーと出会った際、どのような政策と資金支援を行うかには正解がない。

今回は以下15都市が実施しているブロックチェーンに対する政策を比較研究した。

北京、上海、深圳、広州、重慶、天津、蘇州、成都、武漢、杭州、南京、青島、長沙、海口、貴陽

本文では以下5つの視点から15都市を比較し、最後に結論を述べる。

①2018年の生産総額と発展速度

②ブロックチェーン政策の内容

③ブロックチェーン企業数

④雇用者数と給与水準

⑤特許申請数

①2018年の生産総額と発展速度

各都市の経済力は資金面でどれだけブロックチェーンに投資できるかを決定する。15都市のうち13都市は1兆元以上のGDPがあり、貴陽と海口はGDPでこそ劣るものの、貴陽はデータ産業では中国屈指の都市であり、海口は中国国務院(日本でいう内閣)から膨大な支援を受けている。



GDPから見ると、15都市は2兆以上、1兆以上、1兆未満の3つのレベルに分けられる。同一レベルで経済面の違いはほとんどないが、ブロックチェーンへの政策と環境設備では大きく違いが出てくる。

いずれにせよ、これらの都市はブロックチェーン技術の社会実装のための良い基盤を持っていることに変わりはない。
今後の各都市のブロックチェーンの発展は各都市の戦略にかかっている。

②ブロックチェーン政策の内容

2016年以来、各都市はブロックチェーン関連の政策を次々と発表してきた。ただし各都市でその具体性は異なり、マクロ政策のなかに「ブロックチェーン」という単語だけ含まれているものもあれば、ブロックチェーンに焦点を当てた政策を発表している都市もある。

  

北京 2016年12月30日:北京市金融局「北京市”第13次5カ年計画”における金融業発展計画」を発布
2017年1月13日:北京市「北京市”第13次5カ年計画”現代産業と重要機能地区建設計画」を発行
2018年11月9日:中関村(中国のシリコンバレー的ポジション)委員会、北京金融局、北京科学技術委員が「北京市金融技術発展促進計画」を発布
上海 2017年4月28日:上海市インターネット金融業協会「インターネット金融従事機構ブロックチェーン技術応用自律規制」を発布
2018年8月:上海市楊浦区がブロックチェーン促進のための10項目の政策を発表
深圳 2017年9月25日:深圳政府「深圳市金融発展援助」を発行
広州 2017年12月8日:広州市黄埔区「広州市黄埔区開発区ブロックチェーン産業発展法」を発行
2018年3月:ブロックチェーンに関するホワイトペーパーを発布
重慶 2017年11月7日:重慶市経済および情報委員会「ブロックチェーン産業育成および新技術応用に関する提起」を発布
2018年3月7日:重慶政府「ブロックチェーン応用徹底実行の指導のための任務分担の通知」を発布
天津 2017年6月:天津市政府「国家情報産業発展実施法案」を発布
2018年4月23日:”インターネットと先進製造業”発展の促進を実施
杭州 2017年5月9日:西湖市政府金融業事務室、西湖市財務局「西湖市西溪谷区ブロックチェーンパークの提起」を発布
2017年12月:杭州市政府「杭州市未来産業発展推進の指針に関する提起」
蘇州 2017年12月27日:蘇州市同済区ブロックチェーン研究所「蘇州高鉄新城区ブロックチェーン発展援助政策」発行
南京 2017年2月2日:「第13次5カ年計画南京発展規画の通知」を発行
2019年1月:「南京市ブロックチェーン応用のホワイトペーパー」発表
成都 2017年8月8日:成都市金融局、成都市財務局「財政金融19条」発布
2018年9月:「成都市インターネット情報安全産業発展規画」発行
武漢 2018年5月14日:武漢東湖高新区「高質発展の促進実施のための提起」発表
長沙 2018年12月17日:長沙市政府「ブロックチェーン産業発展加速の提起」を発行
青島 2017年7月11日:青島市北区政府「ブロックチェーン産業発展加速の提起」を発行
2018年9月:”青島链湾総合試験区”建設
海口 2018年4月11日:中共中央、国務院「海南全面支援深化と改革開放の指針の提起」を発表
貴陽 2017年5月22日:貴陽国家高新技術産業開発区委員会「ブロックチェーン技術創出および応用を促進する政策10カ条の実施」を発行

北上深公の4大経済都市の中では北京が最も早く関連指針を出したが、一番最初の政策は具体性がなく、北京のブロックチェーン発展に影響を及ぼすものではなかった。

上海、深圳、広州は市全体ではなく区に特化した政策を実施しており、具体的な効果を伴っている。

北京、深圳は上海、広州より格段に成果を上げており、後述する研究方面からもその違いが見て取れる。

第二層(GDP1兆以上)はいまだに重視するほどの成果には達していない。

各都市は多くの施策と資金面の支援を行なっているが、具体的な企業やプロジェクトに集中投下するべきだろう。

各都市の政策発表から見ると、ブロックチェーンの各都市の発展はボトムアップのプロセスをたどる。まず企業のたゆまぬ努力から始まり、経験を蓄積することによって、より広範囲かつハイレベルで、市さらには省レベルまで広がり、業界全体の発展を刺激する。

ひとつ言及の余地があるとすれば、9都市のブロックチェーン産業基金だ。最高規模は100億元にものぼる。しかしこの基金の実際の効果は未だ明確ではなく、この記事では基金を軸に比較していないため、尺度として採用はしていない。

③ブロックチェーン企業数

2018年、全国のブロックチェーン企業数は激増した。新たに登録されたブロックチェーンの企業数は想像を超える。
広州のブロックチェーン企業数は全国でずば抜けおり、その数は9588にも上る。これは2位の深圳の2倍以上である。
理由としては、経済発展、開始時期が早かったこと、黄埔区の政策が関係していると思われる。この政策は国内で最も早く実施された、資金援助の政策である。

海口は経済力、政策力は他の都市に及ばないものの、ブロックチェーン企業数では上海より多い。その背景としては、海口市に位置する海南自由貿易地区が挙げられる。海南自由貿易地区では内陸で禁止されている暗号通貨の発行や、オンライン仮想通貨取引所の活動が緩和されているため、初期段階の企業がこぞって海口にやってくるのだ。

企業数が少ない都市の中で最も期待値が大きいのは南京だ。
今年の1月に、国家主導の技術強化と実体経済の結合に基づいた「ブロックチェーン応用に関するホワイトペーパー」を発表している。今年の春にはさらにブロックチェーン発展への援助を強化し、急成長を遂げるだろう。

青島北区链湾研究院が発表した10つの応用のシナリオは産業に大きな影響を与えている。

④雇用者数と給与水準

各都市の雇用者数と給与水準は業界の発展を左右する。猎聘网(中国最大の求人プラットフォーム)のデータによると、15都市のブロックチェーン人材求人の総数は5620人だ。

ただし、各都市で見るとその数には天と地ほどの差がある。もっともポジションの多い北京では、もっとも少ない海口の145倍の求人がある。比較的経済が発展している重慶でさえ、北京の求人数の1/31だ。しかも重慶は、全体の求人のうち技術者の占める割合はたったの10%だ。

グラフから見て取れるように、4位の杭州(420人)から求人数は激減している。
GDPランキングと求人数からのみ考えるなら、北上深を除いて、杭州は最もブロックチェーン業界が発展している都市だ。

給与水準はさらに、各都市のブロックチェーン業界の発展の差を如実に反映する。

特に技術者の給与水準は、各都市のブロックチェーン産業の給与水準を顕著に表す。

北京の給与水準は比較的高く、ほとんどの一般技術者の年収は40万元に達している。一方で上海、深圳、杭州、成都では30万元、その他の都市では20万元以下となっている。

ただし、上海、深圳の年収30万元以上のポストは杭州、成都より明らかに多い。同様の状況は20万元以下のレベルでも起こっており、重慶や海口に比べ、広州や南京では20万元以上のポストはかなり多い。

気がかりなのは、蘇州はGDPランキングからして期待度の高い都市であるはずだが、企業数と給与の水準はかなり遅れていることだ。

⑤特許申請数

特許数は都市の技術力の成果を反映しており、北京が2572件と圧倒的に多い。
深圳の特許数が多いことも、これまでのデータを見ればうなずける。

北京深圳には少し劣るものの、注目するべきなのが杭州だ。2018年初期、杭州に本社を構えるアリババがブロックチェーン関連の特許数で一位を獲得した。ただし都市別のランキングから見るに、アリババだけでは杭州が一位になることはできない。

より多くの企業が研究力を強化し、技術を深める必要がある。

結論

中国のブロックチェーンの発展はこの15都市から始まり、近い将来この中からリーダーとなる都市が現れ、同時に大都市と後進都市で差が開いていくだろう。

2018年はブロックチェーン関連の企業数が爆増したものの、今後は安定段階に入るだろう。

今後企業数は重要ではなく、応用のシナリオを確立し、徐々に成熟していくことが大事になってくる。

現段階では北京と深圳が各項目で頭一つ抜けている。
しかし業界の発展はこの2都市にだけ頼ることはできない。他の13都市はそれぞれ異なった発展の仕方をしているものの、全体としては良い基盤がある。

今後、企業と都市の最大の挑戦は、合理的なブロックチェーン発展のモデルを見つけ、ブロックチェーンを各都市の新しい経済成長のキーとすることだ。


翻訳元:中国15个城市区块链比较研究 | 链塔智库